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マタイによる福音書5:38~39「善をもって悪に勝て」

3月15日、マタイによる福音書5:38~39「善をもって悪に勝て」
「目には目を…」とは、復讐を奨励した律法ではなく、復讐を制限した律法です(出エジプト記21:24、同害報復法)。人間の心は執念深く、侮辱や損害を加えた相手にとことん仕返ししなければ収まらないので、目には目まで、歯には歯まで、という制限が必要でした。それを律法学者たちは、復讐を実行する権利として用いました。それに対してイエスは「だれかがあなたの右の頬を打つなら、ほかの頬をも向けてやりなさい」とお命じになりました。侮辱されると激しい憤りを覚え、復讐して当然と考える私たちは、この命令に抵抗を覚えます。
山上の説教は、自分の醜い真相に直面させ、どうしようもない自分に絶望させる説教です。と同時に、「わたしは、なんというみじめな人間なのだろう」(ローマ7:24)と叫んで十字架を仰がせ、その罪深さを潔めて御霊に満たし、「わたしたちの主イエス・キリストによって、神は感謝すべきかな」(ローマ7:25)という賛美へと導く説教です。復讐せずにはいられない醜い自分であることを素直に認めて十字架を仰ぐならば、「聖霊によって、神の愛がわたしたちの心に注がれ」(ローマ5:5)、たとい相手がどうであろうとも、まず私自身が最善を尽くして愛することができるように変えられていきます。「ののしられても、ののしりかえさず、苦しめられても、おびやかすことをせず、正しいさばきをするかたに、いっさいをゆだねておられた」(Ⅰペテロ2:23)イエスに倣い、「自分で復讐をしないで、むしろ、神の怒りに任せ(直訳「神の怒りに場所を与える」)」るならば(ローマ12:19)、神ご自身が最善の時に最善の方法をもって勝利を取って下さいます。「最もよい復讐の方法は、自分まで同じような行為をしないことだ」(マルクス・アウレリウス)。